既存住宅状況調査(マンション)で実施する非破壊検査について
既存住宅状況調査(マンション)で実施する非破壊検査について
マンションで実施する非破壊検査は、一部を除いて国でが定められた調査方法基準に基づき実施します。
検査の内容は住棟単位と住戸単位で依頼される場合で異なります。
ここでは最も依頼の多い住戸単位の検査についてご説明します。
(用語の定義) 住棟単位=マンション1棟 住戸単位=マンションの1住戸
非破壊検査について
住戸単位検査の場合は、コンクリートのコア抜き検査(破壊検査)はおこなわず、シュミットハンマー(リバウンドハンマー)を使用した「コンクリート圧縮強度測定」となります。
(コンクリートのコア抜きとは) 建物の構造躯体(壁、床、梁、柱)に穴を開けることを言います。 構造体から抜き出したコンクリートをサンプル検体として試験場で強度を検査する事を「コア抜き検査」と言います。
非破壊検査の要否について
既存住宅状況調査方法基準(平成二十九年国土交通省告示第八十二号)では明確に調査範囲と方法が定められています。
その中で非破壊検査実施の要否についても定められています。
まず始めに当該マンションが平成11年5月1日以降に確認済証の交付を受けたマンションであるかを確認する必要があります。もし、確認済証の交付年月日が上記日付以降であれば非破壊検査をすることを要しないとしています。それ以外は非破壊検査が必要となります。
非破壊検査実施に伴う事前準備について
非破壊検査の実施前には必ず管理組合又は管理会社の承諾を得る必要があります。
なぜなら主な測定箇所は全て共用部であり、承諾なく調査をおこなった場合は間違いなくトラブルの原因となるからです。
管理組合や管理会社にどのように話せば良いかわからない場合、以下の内容を参考に説明していただくと理解していただき易いです。
(管理組合又は管理会社に説明すべき内容)
1.検査の目的を伝えて下さい。
・適正な不動産取引をおこなう為にホームインスペクションをおこなうこと。
例)この度、〇号室を売却(購入)することになり、建物の状態を確認する為ホームインスペクションをおこなう事になりました。
_
2.検査の内容を伝えて下さい。
・コンクリートの強度を測定する検査があること。
・この検査が共用部で機器を使用した打撃検査であること。
例)検査内容は室内や屋上・外壁・基礎を目視で確認する検査と、機器を使用して構造体の強度を測定する検査があります。この検査は非破壊検査といいます。建物を壊すような検査はございません。
_
3.検査の実施場所について伝えて下さい
・コンクリート面が露出した場所でおこなうこと。
・建物の最下階、最下階から数えて2の階の外壁でおこなうこと。
※対象住戸のある階で実施するとは限らないことに注意してください。 ※管理会社に断れらる場合もありますが無理やり承諾をとる必要はありません。 ※共用部の測定が困難な場合は対象住戸のメーターボックス等で実施する承諾をお取りください。 ※既存住宅状況調査の基準では「調査出来なかった」となりますが、「既存住宅瑕疵保険」の加入を希望する場合は、住棟内のいずれかで1~2ヶ所の圧縮強度測定が必要です。
例)検査を行う場所は室内・外部・基礎になりますが、非破壊検査は建物の最下階、最下階から数えて2の階でおこないます。〇号室と階が違いますが国で定められている基準に沿っておこなうのでご了承下さい。無理な場合は〇号室のメーターボックス内でおこなわせていただきます。
_
4.検査時に生じる懸念事項について伝えて下さい
・コンクリート面に打撃を与える為に音がすること。
・メーターボックス内で使用すると音が反響すること。
例)非破壊検査はコンクリート面に打撃を与え、その反動で強度を検査します。その為、打撃音がします。特にメーターボックス内でおこなうと音が響く為、予めご承知ください。
5.案内文が必要な場合の参考例
令和 〇年 〇月〇日 ○○マンション 株式会社 技 研 建物状況調査(ホームインスペクション)実施のお知らせ 拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 株式会社技研の検査員(ホームインスペクター)が建物の外周部や共用部を点検させていただく為、敷地内を行き来させていただきます。 敬具 記 日時 :令和 〇 年 〇 月 〇 日(〇曜日)午前(午後)〇時~午前(午後)〇時頃 場所 :〇 号室 担当者:株式会社 技研(担当者名) お問い合わせ先:株式会社技研 住宅部 〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇 以上
|
既存住宅状況調査における非破壊検査の範囲について
既存住宅状況調査方法基準では、「住戸型調査にあっては、外壁について、最下階及び最下階から数えて二の階の各一箇所を調査すること。」とされています。
しかし調査方法基準にある計測箇所は対象住戸内の検査ではない為、地下階や駐車場でない最下階から数えて2階(エントランスや他の区分所有者の住戸が多い)の測定は管理会社から断られるケースが多くなります。
既存住宅状況調査では検査が出来ない場合、ホームインスペクションができないとは言っておらず、検査結果報告書に「調査できなかった」と記載される事になります。
既存住宅状況調査と既存住宅瑕疵保険の違いについて
非破壊検査の計測箇所について、既存住宅状況調査と既存住宅瑕疵保険では計測箇所が異なります。
既存住宅状況調査の調査範囲は前述で申し上げた通りですが、既存住宅瑕疵保険は計測ができなければ保険の加入ができない為、保険対象住戸の専用部分の内壁及び外壁で2ヶ所(専用部分で検査が実施できない場合は住棟内で1箇所)計測する事となっています。
当社の『WIN-WINホームインスペクション』は、瑕疵保険加入の適否についても確認しています。
調査方法基準に沿った検査が実施できない場合、調査結果報告書には「調査できなかった」と記載しますが、その他の箇所で計測した結果については考察として報告します。
非破壊検査の方法について
ここからは、実際の計測方法について説明します。
既存住宅状況調査を実施するにあたり、言葉で管理会社への説明が難しい場合にこのページを見ていただけるとイメージしていただきやすくなります。
機器について
ホームインスペクションで使用される非破壊検査機器について説明します。
(スイス プロセク社 シュミットコンクリートテストハンマー N型)
シュミットハンマー(リバウンドハンマー)とは構造物に損傷を与えずに検査を行なうことができる機器になります。シュミットハンマーを使用した検査を非破壊検査と呼び、コンクリートの圧縮強度を測定する事ができます。コンクリートに打撃を与え返ってきた衝撃により強度を測定します。
計測方法について
- メーターボックス、ピット、パイプスペース等のコンクリート面が露出した箇所で検査をおこないます。
- 測定箇所が決定した後、測定位置にバラつきが出ないようコンクリートテストハンマー測定箇所シート等でマークします。(3㎝間隔程度)
- 測定数は、コンクリート面の状態によりますが、最低9箇所~25箇所程になります。
- 計測した結果を換算式を用いて計算し、圧縮強度を求めます。
当社では、既存住宅瑕疵保険の加入の適否についても検討している為、「日本材料学会式」を採用しています。
日本材料学会式 | Fc=1.27R-18(N/mm2) |
(参考)圧縮強度計算用シート
※このページに記載する非破壊検査の方法は、一般の方に内容を理解していただく為に作成しています。本来の測定に必要な事前準備や、機器の点検・測定時の補正等については説明を省かせていただいていますことをご承知おき下さい。